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第11章 · テクノロジ

本社では開くのに、工場では開かない。

「回線が遅いのでしょうか」。増強を頼む前に、葵は接続先、場所、端末、設定をそろえて確認します。検品台では動くのに、金属棚の奥では止まる。アドレス、機器、通信の約束から、届かない理由を切り分けます。

6つのテーマ22項目19の図解
この章の目次・学習項目

この章も、新卒コンサルタントの葵と先輩の佐伯が、大手メーカー「アステラ製作所」の受注・生産・出荷をつなぐ案件に取り組みます。

会話と図解で読み進め、詳しい説明は各項目で開けます。

01
同じ店内でつながることと、世界へ届くこと

本社では開くのに、工場の奥では開かない

接続する範囲と、回線・無線の条件を切り分ける。

東工場での接続確認|検品台と部品棚

本社で通ったテストが東工場では止まった。葵はアプリの不具合として送りかけたが、検品台では動き、金属棚の奥では動かないことに気付いた。

田中
物流担当

この端末を棚の向こうへ持っていくと、読み込みが終わらなくなるんです。

新卒ITコンサルタント

同じ端末でも場所で違うんですね。接続先と位置、時刻をそろえて記録します。

井上
開発会社のPM

工場のネットワーク担当に、電波と接続先の設定を確認してもらいましょう。回線を増やす話は、原因の範囲を絞ってからです。

LAN・WAN・インターネット

工場内で見えることと、インターネットから使えることは違う。葵はLAN、WAN、インターネットの範囲を図で確認した。

拠点内のLAN、拠点間をつなぐWAN、世界のネットワークを相互接続するインターネットを分ける。

01広さだけでなく、つなぐ対象を見る
LAN建物や敷地など、限られた範囲の機器を結ぶ
WAN離れた拠点などのLAN同士を広い範囲で結ぶ
詳しい説明・条件・具体例

インターネットは、世界中の多くのネットワークが相互につながったものです。一つの巨大なLANや、一社が持つ一台の装置ではありません。LANはLocal Area Network、WANはWide Area Networkの略です。

小野
生産管理責任者

工場では開くので、自宅でも同じように開けると思っていました。

新卒ITコンサルタント

LANの中で使えることと、外から使えることは別です。どこから使う必要があるかを、先に整理しましょう。

井上
開発会社のPM

WANやインターネットを通る範囲、接続先と公開範囲を、その要件に合わせて確認します。

固定回線・移動体通信・衛星通信

固定回線の契約、ISP、予備の移動体通信を確認する。葵は回線を提供する事業者と、接続サービスの役割を分けた。

建物へ引く回線、移動中に使う通信、衛星経由の通信。使う場所や災害時の備えで選ぶ。

02自社の設備を持つか、借りるか
MNO自社の移動体通信設備を持ち、サービスを提供する
MVNOMNOの設備を借りて、移動体通信サービスを提供する
固定回線
建物などに引いた回線を使います。
移動体通信
基地局と端末が無線で通信します。
衛星通信
人工衛星を経由する通信。
詳しい説明・条件・具体例
固定回線
建物などに引いた回線を使います。FTTHは光ファイバ、ADSLは電話回線の銅線、CATVインターネットはケーブルテレビの設備を利用する方式です。
移動体通信
基地局と端末が無線で通信します。LTE、4G、5Gなどの方式・世代があり、移動中の接続を支えます。
衛星通信
人工衛星を経由する通信。地上の回線が届きにくい場所などでも活用されます。

キャリアは通信回線のサービスを提供する事業者、ISPはインターネット接続サービスを提供する事業者です。両方を提供する企業もありますが、回線と接続サービスは役割として区別します。

通信が切れたときの問い合わせ先や代替手段も、契約と利用条件に合わせて整理した。

有線LAN・無線LAN

仮設した検証端末が、業務用ではなく来客用Wi-Fiにつながっていた。葵は接続先を確認し、許可された検証用ネットワークへつなぎ直す手配をした。設備制御用ネットワークへ勝手につなぐことはしない。

ケーブルでつなぐか、電波でつなぐか。移動しやすさ、安定性、配線や電波の条件を比べる。

03無線で、どこへつなぐ?
インフラストラクチャモードアクセスポイントを介して機器をつなぐ
アドホックモードアクセスポイントを介さず、機器同士を直接つなぐ
詳しい説明・条件・具体例

有線LANの代表的な規格がEthernet(イーサネット/IEEE 802.3)、無線LANで使われる代表的な規格がIEEE 802.11です。Wi-Fiは、無線LAN製品の相互接続性などに関わる認証・ブランドとして使われる名称です。

接続先ネットワークを識別する名前がSSIDです。ESSIDという表現もあります。名前を一覧に出さない「ステルス」設定だけでは、安全性を保証できません。名前を隠すことと、通信を暗号化することは別です。

田中
物流担当

このWi-Fiにつなぐと、業務の画面が開きません。インターネットは見られるんですが。

新卒ITコンサルタント

接続先の名前を見せていただけますか。来客用につながっていますね。

田中
物流担当

名前が似ていて、いつもどちらか迷っていました。

新卒ITコンサルタント

業務用のSSIDと手順を分かるようにします。有線、アクセスポイント経由、機器同士の接続も区別して、設定を確認しましょう。

井上
開発会社のPM

SSIDを隠すだけで保護したことにはなりません。接続の認証や分離も合わせて確認します。

WEP・WPA2・WPA3

Wi-Fiにパスワードがあるから通信は全部安全、という説明を葵はしなかった。無線区間とWebサーバまでの保護は別だ。

無線LANを守る方式。古いWEPには弱点がある。Wi-Fiの暗号化は、通信先まで全区間を守るものではない。

詳しい説明・条件・具体例

無線の電波は工場の壁の外へも届き得ます。通信の保護に使われてきた方式にWEP、WPA、WPA2、WPA3があります。WEPは既知の弱点があり、安全な保護として頼れません。対応状況を確認し、適切な方式と設定を選びます。

小野
生産管理責任者

Wi-Fiにパスワードがあれば、取引先の情報もそこから先まで守られますか。

新卒ITコンサルタント

無線区間の保護と、Webサーバまでの通信の保護は別です。両方を確認します。

井上
開発会社のPM

弱いWEPなどに頼らず、対応する暗号化方式と設定を見直しましょう。

新卒ITコンサルタント

来客用と業務用も分けます。一つ鍵を付けたから全部安全、という説明はしません。

2.4GHz帯・5GHz帯

製造現場の機器や壁、利用する周波数で、つながり方が違った。葵は速さだけでなく、範囲と干渉を記録した。

電波の届き方や混雑しやすさが違う。数字の大きさだけで、使う場所での速さは決まらない。

04無線LANの代表的な帯域を比べる
2.4GHz帯壁などを回り込みやすい一方、他の機器との干渉が起きやすい
5GHz帯2.4GHz帯より障害物の影響を受けやすい一方、干渉を避けやすい場面がある
詳しい説明・条件・具体例

周波数は1秒間の振動回数で、単位はHzです。放送、無線LAN、移動体通信、衛星通信などは、用途に応じた周波数帯を使います。利用できる周波数や条件は国・地域のルールにも依存します。

帯域の中を分けて通信に使う区分がチャネルです。隣接するチャネルの重なりなどによって干渉が起きるため、数字が違えば必ず干渉しないとは限りません。6GHz帯を使う規格・機器もあります。

日本でプラチナバンドと呼ばれる700〜900MHz帯付近は、比較的遠くへ届き、障害物を回り込みやすい特性があります。キャリアアグリゲーションは、複数の周波数帯などを束ねて通信容量を増やす技術です。

田中
物流担当

検品台ではつながるのに、この棚の奥へ来ると途切れます。

新卒ITコンサルタント

同じ工場でも、場所で違うんですね。壁や製造現場の機器、使う周波数を記録します。

井上
開発会社のPM

2.4GHzと5GHzの性質やチャネルも見ながら、干渉と届く範囲を現地で確かめましょう。

新卒ITコンサルタント

仕様表の速さだけで決めず、実際に使う位置で確認します。

本社、工場内、外部からの接続を分け、棚や壁の配置も添えて確認を依頼した。業務用と来客用、設備を制御するネットワークを混同せず、調査する範囲を担当者とそろえた。

ちょっと考えてみようWi-Fiの名前を隠せば、暗号化は不要?考え方をひらく +

不要にはなりません。SSIDを見つけにくくしても、通信内容を保護する仕組みにはならないためです。

02
「住所」を一つ覚えるだけでは、届かない

「住所は合っています」の、どの住所?

名前、最終宛先、次の相手、サービスを分ける。

接続障害の調査|井上との画面共有

IPアドレスは正しいと聞いたのに、ページは開かない。井上との画面共有で、確認項目が増えた。

井上
開発会社のPM

アドレスの設定は確認できました。次は名前解決と、必要なサービスへの接続を分けて見ましょう。

葵はDNS、MAC、ポートという言葉に少し混乱した。佐伯は、最終目的地と、次に渡す相手を分けて考えるよう促した。

新卒ITコンサルタント

同じ宛先を別の名前で呼んでいるのではなく、役割が違うんですね。

IPアドレス・MACアドレス・ポート番号

IPは通信先、MACは同じリンク上の相手、ポートはサービスなどの区別。葵は、どの識別子の話かを確認してから記録した。

IPはネットワーク上の宛先、MACはリンク内での識別、ポート番号は通信を受けるアプリなどを区別する。

05三つの識別子を混同しない
識別子主な役割
IPアドレスネットワーク上の通信先を示す
MACアドレス同じリンク上で通信するインタフェースを識別する
ポート番号通信先のサービス・アプリケーションを区別する
詳しい説明・条件・具体例

IPアドレスにはネットワーク部とホスト部があります。一台が複数のIPアドレスを持つこともあります。MACアドレスには機器に割り当てられたもののほか、ソフトウェアで設定・ランダム化されるものもあります。「絶対に変わらない本人証明」ではありません。

ポート番号は16ビットの番号で、IPアドレスなどと組み合わせて通信を識別します。同じサーバがWebとメールのサービスを動かすときも、宛先ポートなどによって処理を振り分けられます。

新卒ITコンサルタント

IP、MAC、ポートが同じ欄に書かれていて、何の宛先か分からなくなりました。

井上
開発会社のPM

最終的な通信先、同じリンク上で渡す相手、サービスなどの区別を分けて記録しましょう。

新卒ITコンサルタント

MACアドレスも、変わらない本人証明としては扱わないんですね。設定と利用目的まで確認します。

DHCP

端末が受け取ったIPアドレス、マスク、ゲートウェイ、DNSを確認した。DHCPは、その設定を自動で配る仕組みだった。

IPアドレスなど、ネットワークに接続するための設定を自動で配る。

06接続時に受け取る設定の例
IPアドレスこの端末が使うアドレス
サブネットマスクどこまでが同じネットワークか
デフォルトゲートウェイ別のネットワークへ出る入口
DNSサーバ名前を調べる問い合わせ先
詳しい説明・条件・具体例

DHCPは、端末へIPアドレスなどの設定を自動的に割り当てるプロトコルです。手動設定の手間や重複のリスクを減らします。貸出期間のある割当てが基本で、接続するたびに必ず違う値になるわけではありません。

井上
開発会社のPM

IPアドレスはありますね。マスク、ゲートウェイ、DNSはどうなっていますか。

新卒ITコンサルタント

アドレスだけ見て、設定は大丈夫だと思っていました。残りも確認します。

井上
開発会社のPM

DHCPから受け取る設定がそろっているか、接続先を変えた前後で比べましょう。

新卒ITコンサルタント

自動だから確認しなくてよい、ではないですね。必要な設定を一組で記録します。

DNS

名前では開かない場合、葵はDNSの問い合わせ結果を担当者へ確認した。URL全体とホスト名を同じものとして渡さないようにした。

ドメイン名に対応するIPアドレスなどを調べる。名前が引けない障害と、回線の障害は別。

https://shop.example/menu
07名前を調べる通信と、ページを取りに行く通信
スマホはDNSで宛先のIPアドレスを調べる。その後、ルータを経由してWebサーバへアクセスする。DNSがWeb本文を中継するわけではない。スマホDNS① 名前からIPを調べるルータWebサーバ② 宛先へ、ネットワークをたどる
詳しい説明・条件・具体例

DNSは、ドメイン名に対応するIPアドレスなどを調べる仕組みです。人が覚えやすい名前と、通信に使う情報を結び付けます。一つの名前に複数のIPアドレスが対応する場合もあります。

この例のURLでは、httpsが通信方式を示すスキーム、shop.exampleがホスト名、/menuがサーバ内の資源を示すパスです。.exampleは説明用のドメインです。DNSへURL全体を渡してページ本文を受け取るわけではありません。

小野
生産管理責任者

この名前を入れると開きません。サイトが止まっていますか。

新卒ITコンサルタント

まず名前に対応する宛先を調べられているか、DNSの結果を確認します。ページを取得する段階とは分けたいです。

井上
開発会社のPM

問い合わせるホスト名を教えてください。URL全体ではなく、その中の名前の部分です。

新卒ITコンサルタント

分かりました。どの段階で止まったかを切り分けて、お返しします。

ARP

遠くのWebサーバへ送るとき、工場内でARPが調べるのは通常、次のルータのMACアドレスだと分かった。

同じリンク内で、IPv4アドレスに対応するMACアドレスを調べる。遠い宛先なら、次に渡すルータを調べる。

08遠くのサーバへ行く最初の一歩
別のネットワークのサーバへ送る場合、端末はルータのMACアドレスを調べて最初のフレームを送る。IPアドレスで示す宛先は遠くのサーバ。工場の端末同じLANルータ入口の相手MACで次の相手へ遠くのサーバIPは最終的な宛先を示す
新卒ITコンサルタント

サーバのIPアドレスが分かっても、そのまま届けるわけではないんですね。

佐伯
先輩ITコンサルタント

このLANで、実際に次のフレームを受け取るのは誰だろう。

新卒ITコンサルタント

ルータです。だからARPで確かめる相手は、遠いサーバではなく、まずルータ。

葵は設定票のゲートウェイを丸で囲んだ。第5章で追ったビットの計算が、同じネットワークかを判定するところで使われていた。

新卒ITコンサルタント

まず設定と到達先をそろえて記録します。通信できないという一言だけで、回線の増強を頼むのは早かったです。

詳しい説明・条件・具体例

ARPは、IPv4の同じリンク上で、IPアドレスに対応するMACアドレスを調べる仕組みです。宛先が同じLANにいれば、その宛先を調べます。別のネットワークにいれば、通常は次の中継点であるルータのMACアドレスを調べます。

遠くのサーバのMACアドレスを、工場のLANから直接ARPで探すわけではありません。リンクが変わると、フレームの送り先も変わります。IPv6では、同種の役割を近隣探索の仕組みが担います。

新卒ITコンサルタント

遠くのサーバへ送るなら、そのサーバのMACアドレスをARPで探すのだと思っていました。

井上
開発会社のPM

このLANで次に渡すのは、通常、ルータです。IPの最終宛先と、フレームを渡す次の相手を分けましょう。

新卒ITコンサルタント

届け先と、いま手渡す相手が違うんですね。構成図の矢印が、やっとつながりました。

名前を引けるか、接続の設定を受け取れているか、次の中継先へ届くか。葵は切り分けの順番を記録した。「つながりません」の報告が、担当者の調査を助ける報告になってきた。

ちょっと考えてみよう工場のLANの外にあるWebサーバへ送るとき、最初のフレームの宛先MACは誰のもの?考え方をひらく +

通常は、同じLANにある次の中継ルータのMACアドレスです。IPパケットの宛先と、今いるリンク上のフレームの宛先を区別します。

03
アドレスの前半は、どこまで?

同じ番号を、別の工場でも使っていた

アドレスの範囲と変換、区切り方を確認する。

拠点の接続設計|ネットワーク設定表

二つの拠点に同じ192.168で始まるアドレスがあった。葵は重複の事故だと思ったが、それぞれ別の内部ネットワークで使っていた。

井上
開発会社のPM

今は別々の内部ネットワークなので、それだけで重複事故とは言えません。ただ、工場同士を接続するなら、その範囲も確認が必要です。

佐伯
先輩ITコンサルタント

同じ範囲の中で重なるのか、別の範囲で使っているのか。つなげるときに、もう一度確認が必要だね。

IPv4・IPv6

IPv4とIPv6の表記が混在した回答を、葵は文字列の長さだけで異常と判断しなかった。

アドレスの長さはIPv4が32ビット、IPv6が128ビット。使えるアドレスの数が大きく違う。

09桁数と表記の違い
IPv432ビット
8ビットずつ4区分を10進数で表す
IPv6128ビット
16ビットずつ8区分を16進数で表す
IPv4の例:192.168.1.10
IPv6の例:2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334
詳しい説明・条件・具体例

IPv4の各区分は0〜255で、アドレス空間は2の32乗、約43億通りです。IPv6では、はるかに大きなアドレス空間を使えます。IPv6表記には先頭の0や連続する0を省略する規則もあります。上のIPv6は説明用の範囲です。

32ビットと128ビットの違いを知ると、対応する方式や接続条件を分けて確認できた。

グローバルIP・プライベートIP・NAT・NAPT

内部の複数端末が同じ外部IPを使う仕組みを、葵はNATとNAPTの対応表で確認した。

内部用とインターネット用のアドレスを分ける。NATはアドレス、NAPTはポート番号も使って変換する。

10IPv4のプライベートアドレス範囲
範囲表記
10.0.0.0
〜10.255.255.255
10.0.0.0/8
172.16.0.0
〜172.31.255.255
172.16.0.0/12
192.168.0.0
〜192.168.255.255
192.168.0.0/16
11同じ外部IPでも、ポートを分けて戻り先を識別
内部の通信変換後の例
192.168.1.10
ポート 5000
203.0.113.10
ポート 40001
192.168.1.11
ポート 5000
203.0.113.10
ポート 40002
アドレスは説明用。変換装置は対応表を使って応答を内部端末へ戻します。
詳しい説明・条件・具体例

グローバルIPアドレスは、インターネット上で重複しないように割り当てられます。プライベートIPアドレスは、組織や家庭などの内部で使うために受注された範囲で、異なるネットワークなら同じ値を再利用できます。

NATは、通信を中継するときにIPアドレスを変換する仕組みです。さらにポート番号も使って、多数の内部端末が一つの外部アドレスを共有できるようにする方式をNAPTと呼びます。

新卒ITコンサルタント

ログでは同じ外部IPなので、一台の端末が送っているのかと思いました。

井上
開発会社のPM

内部の複数端末が、そのアドレスを共有している場合があります。NAPTではポート番号も使って戻り先を区別します。

新卒ITコンサルタント

NATとNAPTの対応を見て、アドレス一つから端末や人を決めつけないようにします。

サブネットマスク

同じ192.168.1.10でも、マスクが/24か/20かで所属が変わる。葵は第5章のAND演算へ戻って計算した。

IPアドレスのどこまでがネットワーク部かを示す。同じネットワークかどうかを判断する手掛かり。

12同じアドレスでも、区切る位置で所属が変わる
マスクネットワーク
255.255.255.0
(/24)
192.168.1.0
255.255.240.0
(/20)
192.168.0.0
詳しい説明・条件・具体例

IPv4アドレスのどこまでがネットワーク部で、どこからがホスト部かを示すのがサブネットマスクです。基本的なマスクでは、左から連続する1がネットワーク部、残りの0がホスト部を示します。

端末のアドレスが192.168.1.10のとき、次のように所属するネットワークが変わります。

/20の計算を、3区分目で確かめる

  1. 先頭の192と168は、マスクが255なのでそのまま残る。
  2. 3区分目の1は2進数で00000001、マスク240は11110000。ANDを取ると00000000=0。
  3. 4区分目はマスクが0なので0。ネットワークアドレスは192.168.0.0となる。

/20はネットワーク部が20ビットという表記で、ホスト部は32−20=12ビットです。単純に「最後の一つだけがホスト部」と決めつけず、指定されたマスクを確認します。

数と論理の知識が、ネットワーク設定の確認にそのまま使えた。最後の一区分だけがホスト部だと、固定して考えなくなった。

葵はアドレスの範囲、変換する場所、同じネットワークと判定する条件を記録した。拠点を増やす将来案にも、接続の前提を残せるようになった。

ちょっと考えてみよう255.255.255.0は、ネットワーク部が何ビット?考え方をひらく +

255は2進数で11111111。それが三つ続くので24ビット、/24です。残りの8ビットがホスト部です。

04
速い回線でも、荷物は瞬間移動しない

写真の転送に、なぜ時間がかかる?

単位と中継の役割から、時間の見積りを確かめる。

拠点テスト|商品画像の更新

商品写真の一括更新が、予定より長くかかった。葵の計算表にはMBをMbpsで割った式が残っていた。少し恥ずかしかったが、気付いたことを先に報告した。

小野
生産管理責任者

始業前に終えるつもりでしたが、まだ更新中です。次回は、どれくらい時間を取ればよさそうでしょうか。

新卒ITコンサルタント

バイトをビットに直していませんでした。伝送効率と、通信以外の待ち時間も分けて見積り直します。

bps・実効速度

100MB、1Gbps、伝送効率50%の例で、800Mbit÷500Mbpsを確かめる。葵は計算に使う単位を欄へ書いた。

bpsは1秒当たりのビット数。容量がバイトなら8倍してそろえ、実際に使える速度で割る。

転送時間データ量[bit]÷ 実効速度[bit/s]

実効速度=回線速度×伝送効率。ここでは10進のM=10⁶、G=10⁹で計算します。

詳しい説明・条件・具体例

通信路では電気信号、光、電波などを使ってビットを伝えます。通信速度の単位bpsはbit per second、1秒間に送るビット数です。1バイトは8ビットなので、MBとMbpsをそのまま割ってはいけません。

100MBを、1Gbps・伝送効率50%の回線で送る

  1. 100MB×8=800Mbit。
  2. 1Gbps×0.5=0.5Gbps=500Mbps。
  3. 800Mbit÷500Mbps=1.6秒。

この計算は条件を単純化したものです。実際には待ち時間、再送、サーバ処理などもあり、公称速度がそのまま常時使えるとは限りません。

高橋
経理担当

この1.6秒なら、現場でもそれだけ待てばよいという意味ですか。

新卒ITコンサルタント

この計算例の条件での値です。100MBを800Mbitに直し、伝送効率50%の500Mbpsで割っています。

井上
開発会社のPM

実際には、ほかの待ち時間や処理時間も入ります。実測と同じものとしては扱えません。

新卒ITコンサルタント

単位と前提を添えます。計算結果だけを、使ったときの時間として約束しないようにします。

回線交換・パケット交換

通信路を専有する方式と、小さなパケットに分けて共有する方式を区別した。

回線交換は通信路を占有する。パケット交換はデータを小分けにし、通信路を共有する。

13通信路の使い方が違う
回線交換通信の間、回線を確保して使う
パケット交換データを小さな単位に分け、通信路を共有する
詳しい説明・条件・具体例

パケットには、送り先などを示す情報を付けて送ります。複数の通信が同じ経路を使える一方、混雑すると待ちや廃棄が起きることがあります。必要に応じて到着確認や再送などで補います。

混雑、待ち、再送があり得ると分かると、公称速度を常に使える速度として約束しない理由を説明できた。

スイッチ・ルータ

同じLAN内の転送と、ネットワーク間の転送では、見る宛先が違う。葵はスイッチとルータを分けて構成図を読んだ。

スイッチは主にMACアドレスを見て転送する。ルータはIPアドレスを見て別のネットワークへ送る。

14同じLANの中か、別のネットワークか
L2スイッチ主にMACアドレスを見て、同じLAN内の転送先を判断
ルータ/L3スイッチIPアドレスを見て、ネットワーク間の転送先を判断
詳しい説明・条件・具体例

L2スイッチは、学習したMACアドレスとポートの対応などを使ってフレームを転送します。ルータは経路情報を使って、IPパケットを次のネットワークへ送ります。L3スイッチはルーティングの機能を持つスイッチです。

デフォルトゲートウェイは、個別の経路がない宛先へ出るときに使う標準の中継先です。端末が別のネットワークへ送信する際の入口となるルータのアドレスを設定します。

小野
生産管理責任者

この箱を交換すれば直りますか。

新卒ITコンサルタント

どの役割の機器かを先に見たいです。スイッチとルータでは、見る宛先と中継する範囲が違います。

井上
開発会社のPM

同じLAN内の通信か、外のネットワークへ進む通信かを確認しましょう。デフォルトゲートウェイも見ます。

新卒ITコンサルタント

機器を交換する前に、どこへ渡す段階で止まったかを整理します。

単位の誤りを直し、通信とサーバ処理の時間を分けて説明した。第5章で覚えた換算を、使う場面でも確かめる。葵は「知っている」と「実際に確認する」の差を、また一つ覚えた。

ちょっと考えてみよう40MBを80Mbpsの実効速度で送ると、何秒?考え方をひらく +

40×8=320Mbit、320÷80=4秒です。まずバイトをビットへ換算します。

05
相手に伝わるには、同じ約束がいる

メールが読めることと、送れることは別だった

プロトコルの役割を、症状の切り分けへ使う。

通知機能の確認|受注受付メール

受信済みのメールは見えるのに、受注の通知が送られない。葵はメール全体が使えないと報告する前に、送信と閲覧を分けた。

田中
物流担当

昨日のメールは開けます。でも、今のテスト受注の通知は来ていません。

井上
開発会社のPM

受信済みの閲覧と、今回の通知送信は別に確認します。テストした受注番号と時刻を教えてください。

新卒ITコンサルタント

送る処理と、サーバにあるメールを見る処理は別ですね。どの段階で失敗したかを確認します。

プロトコル・TCP/IP

通信の問題を、アプリ、転送、IP、リンクのどこで考えるか整理した。葵はOSIの7層とTCP/IPの4層を、同じ分け方だとは扱わなかった。

通信のルールを役割ごとの階層に分ける。各階層が協力して、アプリのデータを相手へ届ける。

15TCP/IPの4階層と、OSI基本参照モデルの対応
TCP/IP主な例OSIの層
アプリケーションHTTP、SMTP、DNS7 応用
6 表現
5 セッション
トランスポートTCP、UDP4 トランスポート
インターネットIP3 ネットワーク
ネットワークインタフェースEthernet、Wi-Fi2 データリンク
1 物理
詳しい説明・条件・具体例

プロトコルは、通信の手順やデータ形式などの約束です。インターネットでは、TCP/IPというプロトコル群が使われます。階層に分けると、下の通信方式が変わっても、上の機能を組み合わせやすくなります。

OSI基本参照モデルは通信機能を7層に整理する参照モデルで、TCP/IPの4階層とは分け方が異なります。TCPは順序や再送などを管理する信頼性のある通信を提供し、UDPはそのような保証を基本機能に持たず、軽い単位でデータを送ります。用途に応じて使い分けます。

階層の言葉は、担当を押し付け合うためではない。どこまで動いているかを共有し、次に調べる場所を決めるために使った。

SMTP・POP・IMAP

SMTPでの送信と、POP・IMAPでの閲覧の役割を分ける。複数端末で状態をそろえる要件も確認した。

SMTPはメールを送る。POPは受信メールを取り出す。IMAPはサーバ上のメールを管理・同期する。

16SMTP・POP・IMAPを役割で読む
方式役割
SMTPメールを送信し、メールサーバ間で転送する
POPサーバからメールを取り出す。端末側での保存を中心とする
IMAPサーバ上のメールを管理し、複数端末から状態を共有しやすくする
詳しい説明・条件・具体例

POPで取得したら必ずサーバから消える、とは限りません。コピーを残す設定もあります。IMAPでは既読やフォルダなども同期できます。送信と閲覧は別の役割なので、SMTPとIMAPを組み合わせるような使い方をします。

小野
生産管理責任者

メールは送れます。でも、別の端末では読んだ状態になりません。

新卒ITコンサルタント

送信、閲覧、状態の同期は、別の確認が必要ですね。SMTPとPOP・IMAPの役割から整理します。

井上
開発会社のPM

複数端末でどう使いたいかを教えてください。その要件に合わせて方式と設定を確認します。

新卒ITコンサルタント

「メールが動く」の一項目で終わらせず、使い方ごとに試験します。

HTTP・HTTPS・FTP・NTP

Webの取得、ファイル転送、時刻同期を、それぞれのプロトコルへ対応させた。葵はHTTPSでも、事業者の誠実さまで保証するわけではないと確認した。

Webの通信、保護したWeb通信、ファイル転送、時刻合わせ。プロトコルを用途で見分ける。

HTTP
Webの資源を要求し、応答を受け取るためのプロトコル。
HTTPS
HTTPの通信をTLSで保護します。
FTP
ファイルを転送するプロトコル。
NTP
ネットワーク上で機器の時刻を同期するプロトコル。
詳しい説明・条件・具体例
HTTP
Webの資源を要求し、応答を受け取るためのプロトコル。
HTTPS
HTTPの通信をTLSで保護します。暗号化だけでなく、通信相手の確認や改ざん検知にも関わります。
FTP
ファイルを転送するプロトコル。従来のFTPは通信内容や認証情報を暗号化しないため、用途に合う安全な方式が必要です。
NTP
ネットワーク上で機器の時刻を同期するプロトコル。ログの突き合わせや認証にも、正しい時刻が役立ちます。

何を守り、何を確かめる通信かが見えると、設定の相談とセキュリティの確認をつなげられた。

プロトコルを役割で整理すると、障害の説明が細かくなった。時刻のずれもログの突き合わせに影響するため、NTPによる時刻同期を含めて確認することになった。

ちょっと考えてみよう複数端末で既読状態をそろえたい。メールの閲覧にはPOPとIMAPのどちらが向いている?考え方をひらく +

サーバ上の状態を複数端末で共有するIMAPが向いています。送信には別途SMTPなどが使われます。

06
便利なサービスにも、届き方の工夫がある

一通のお知らせにも、守る相手がいる

サービスの便利さと、情報が届く範囲を確認する。

試行案内の準備|顧客への連絡

案内メールのCc欄に、複数の顧客のアドレスが並んでいた。葵は送信前に気付き、配信の方法を小野と確認した。

新卒ITコンサルタント

送信は少し待っていただけますか。この宛先の入れ方だと、ほかの方のアドレスも見えてしまいます。

小野
生産管理責任者

社内で共有するメールと同じように入れていました。取引先同士にも見えるんですね。

新卒ITコンサルタント

はい。個別の案内に合った方法を確認して、宛先の確認手順も一緒に決めましょう。

工場が便利になるほど、情報が届く相手も増える。最後の公開前点検へ進む前に、通信とサービスの便利さが何を広げるのかを見直した。

To・Cc・Bcc

To、Cc、Bccで、誰にどの宛先が見えるかを確認した。葵はBccを本文の暗号化とは混同しなかった。

Toは主な宛先、Ccは共有先。Bccの宛先はほかの受信者へ表示されない。送信前に確認する。

17顧客への一斉連絡では、アドレスの露出に注意
Cc他の受信者にも、共有先のアドレスが見える
Bcc他の受信者へ、その宛先のアドレスを表示しない
詳しい説明・条件・具体例

メールアドレスは、利用者などを表す部分とドメインを@で区切ります。Toは主な宛先、Ccは内容を共有したい宛先です。ToとCcのアドレスは、通常ほかの受信者にも見えます。

Bccは宛先の非表示であって、本文を暗号化する機能ではありません。一斉送信では宛先欄の選択を確認し、適切な配信方法を使います。返信・転送で思わぬ情報が広がる点にも注意します。

田中
物流担当

一斉に連絡する場合、取引先同士のアドレスは見えないようにしたいです。

新卒ITコンサルタント

To、Cc、Bccで宛先の見え方が違います。送る前に、本文だけでなく宛先欄も確認しましょう。

田中
物流担当

Bccにしたら、本文も暗号化されるんですか。

新卒ITコンサルタント

いえ、それは別です。宛先をほかの受信者に見せないことと、通信や本文を保護することを分けて考えます。

BLE・LPWA

温度など少ないデータを送る将来案では、速さより電池寿命や距離が重要になる。葵はBLEとLPWAの性質を整理した。

BLEは近距離で省電力、LPWAは少量のデータを広い範囲へ省電力で送る用途に向く。

18距離と消費電力、送る量で選ぶ
BLEBluetooth Low Energy。近距離で低消費電力の通信
LPWALow Power Wide Area。少ない電力で広い範囲へ、小さなデータを送る
詳しい説明・条件・具体例

冷蔵庫の温度を数値で送るなら、常時高精細な動画を送るのと同じ通信量は必要ありません。速度だけでなく、距離、電池寿命、通信頻度、費用も含めて選びます。

すべてを同じ通信方式で解決しようとせず、送る量、頻度、場所、電力から選ぶ。受注の通信と違う要件を見分けられた。

WWW・RSS・Cookie・CDN

ログイン状態、更新情報、画像の配信。葵はCookie、RSS、CDNなどが支える役割を確認した。

Webの仕組み、更新情報、ブラウザに保存する情報、配信を分散する仕組み。役割を分けて覚える。

WWW
リンクで結ばれたページなどを、ブラウザから利用する仕組み。
RSS
サイトの更新情報を配信し、まとめて確認しやすくする仕組み。
Cookie
Webサイトがブラウザへ保存させる小さなデータです。
CDN
コンテンツを分散した配信拠点などから届ける仕組みです。
詳しい説明・条件・具体例
WWW
World Wide Web。リンクで結ばれたページなどをブラウザで利用する仕組みです。インターネット上のサービスの一つであり、インターネットそのものと同義ではありません。
RSS
サイトの更新情報を一定の形式で配信し、利用者がまとめて確認しやすくする仕組みです。
Cookie
Webサイトがブラウザへ保存させる小さなデータです。ログイン状態の識別や設定の保存などに使います。パスワード自体を保存する必要はありません。
CDN
コンテンツを分散した配信拠点などから届ける仕組みです。通信やサーバの負荷を減らし、表示の高速化などに役立ちます。

Cookieにはプライバシーやセッション保護の注意が必要です。CDNに保存した内容も、更新・削除の反映や、個人ごとに違う情報の扱いを適切に設計します。

速く配る便利さにも、更新の反映や個人ごとの情報を混ぜない設計が必要だった。サービス名を知ることが、運用の確認につながった。

VPN

本社と工場を結ぶ既存ネットワークの構成を、情報システム部が説明した。葵は新しい回線を足す前に、インターネットVPNとIP-VPNの違いと、今回通す通信の条件を確認した。

離れた場所を、仮想的な専用ネットワークでつなぐ。接続方式と、認証や暗号化の条件も確かめる。

19通る網と、守り方を分けて考える
インターネットVPN公衆のインターネット上に、暗号化などで保護した仮想的な通信路を作る
IP-VPN通信事業者の閉域IP網などを利用して、拠点間を仮想的につなぐ
詳しい説明・条件・具体例

VPNはVirtual Private Networkの略です。IP-VPNの閉域性と、通信内容の暗号化は同じではありません。利用する方式・契約を確認します。いずれも、接続端末や認証情報が侵害されれば危険になるため、「VPNなら何でも安全」とは考えません。

森川
事業部長

VPNを入れれば、本社からつなぐときは心配ありませんか。

新卒ITコンサルタント

VPNだけですべて安全とは言えません。端末や認証が侵害された場合も考える必要があります。

井上
開発会社のPM

インターネットVPNとIP-VPNでは基盤も違います。閉域性と暗号化も、同じ意味ではありません。

新卒ITコンサルタント

何を分離し、何を暗号化するか、利用者の確認をどう行うかまで、分担して確かめます。

工場内、本社、顧客、外部のサービス。つながる範囲が整理できた。葵はそれを、次のセキュリティレビューへ持っていく。守るべき情報と入口を、今なら具体的に説明できる。

ちょっと考えてみようCookie、CDN、VPNのうち、ブラウザに小さなデータを保存する仕組みは?考え方をひらく +

Cookieです。CDNは分散配信、VPNは仮想的な専用ネットワークを構成する仕組みです。

この章、おつかれさまでした!

技術担当へ、調べたことを渡せた。

名前解決、次の通信相手、機器とプロトコルの役割がつながりました。通信できることを確認したら、最後は情報と運用の守りを確かめ、顧客へ引き継ぎます。

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